弱さとともに生きる

友だちから「弱い人ね」と言われたらどんな気持ちになりますか。

目標を達成できなかった時、例えば、大事な試合に負けた時や入試や就職活動に失敗した時、私たちは自分のことをだめだと思い、自分の弱さを悔やみます。

 

弱いという言葉には、能力がない、力がない、忍耐力がない、意志が弱いといった否定的な意味があります。通常、ロボットはある任務を完璧にこなすように作られますが、豊橋技術科学大学の岡田先生は、あえて「弱いロボット」を開発しています。一つの例が、周りにいる人を巻き込むゴミ箱です。そのロボットは筒形のゴミ箱です。部屋のゴミを見つけることはできますが、自力で拾うことはできません。そのゴミを拾い、筒形のゴミ箱に入れてください、とお辞儀をしてお願いするようプログラムされています。できないことは人に頼ってもよい、という発想でロボットを開発しました、と岡田先生は話しています。「弱いロボット」の役割は、周りにいる人を巻き込んで目標を達成し、誰かの役に立ち、協力できるという喜びを関わった人に伝えることだ、と説明しています。弱さは人との関係を豊かにする機会を与えてくれる、という新しい見方を岡田先生は示しているように思われます。

 

私は10年前に手術を受け、以前より身体能力が弱くなりました。歩くペースも遅くなったので、私の状態を知らない人と歩くときは、「以前のような身体能力がないので、あなたのペースに合わせて歩くことができません」と言う必要があります。弱いロボットのように、できないことは人に伝えお願いします。伝えることで、相手の方には、私の弱さに対する新たな理解が生まれます。伝えないと、相手にペースを合わせることでクタクタになってしまいます。

 

私たちは何でも一人でできるように、と教育されていますが、困ったときは人に頼ってよいのです。上手に援助を求めること、弱さを伝えることで、周りの人とつながることができ、そうしたつながりは私たちを豊かにしてくれます。援助した人もそこから得るものがあります。

 

©生田 かおる