グリーフケア・カフェとは
グリーフとは大切な人やものをなくしたことで経験する心と身体に現れる反応で、日本語では悲嘆と訳されています。
グリーフケア・カフェは、グリーフに向き合うための安心・安全な場所を提供しています。
グリーフを経験している当事者が自分の物語を紡ぐ場所です。
悲嘆にくれるということは、亡くなった人の人生が重要だった証です。
グリーフケア・カフェ開催のご案内
日時:2024年12月1日(日) 14時30分~16時
場所:横浜カウンセリングオフィスR&B
参加料金:500円(当日お支払いください。)
ファシリテーター:生田かおる(公認心理師・臨床心理士)
開催前日の正午までに、お問合わせフォームからお申込みください。
グリーフケアQ&A
何かを失うと、私たちは失ったものを何とか取り戻したいと思うものです。
大切な家族や親しい人を失った後に経験する心と身体の反応、グリーフの経過、喪失への適応についてクイズ形式で学んでいきます。
●喪失に伴う心と身体の反応
まず、初めに大切な人を失った時に経験する心と身体の反応に関する質問です。
Q:大切な人を失った時に経験する心と身体の反応は、皆、同じだと思いますか?
A:皆同じではありません。
大切な人を失った時に、グリーフを経験するのは自然な反応ですが、その現れ方は人により異なります。反応が激しく現れる方もいれば、そうでない方もいます。その反応が長期にわたり持続する方もいますし、そうでない方もいます。
●グリーフの経過
次にグリーフの経過に関する質問です。
直後の反応に関して3つ質問があります。
Q:大切な人を失った直後には、皆、「悲しみ」だけを経験します。
A:答えは×です。
大切な家族や親しい人が亡くなった時、とっさの反応としては、「悲しみ」の他に「ショック」や「混乱」があり、言葉もでない状態になります。現実を拒否している状態です。「うそだ」「何かの間違いだ。昨日まで元気だったのに」と叫びたい気持ちになる方もいます。
Q:長年連れ添った夫が亡くなり、人の声がすべて遠くに聞こえるようになりました。これまで当たり前にこなしていた家事ができなくなりました。私はおかしいのでしょうか?
A:直後には、現実感がなくなる方がいます。人の声が遠くに聞こえるようになったり、周囲から隔離されたような感覚になるのは自然な反応です。当たり前にこなしていた家事ができなくなるのも自然な反応です。買い物、食事の支度などは誰かに助けてもらうとよいでしょう。
Q:兄は、長年連れ添った奥さんを亡くしましたが、悲しんでいる様子がみられません。兄は悲しくないのでしょうか?
A:男性は女性よりも感情表現や援助を求めることに慣れていません。表現しないから、グリーフが存在しないというわけではありません。グリーフ後の反応を、他人に見せず自分でコントロールする方もいます。
数日から数週間してからの反応に関する質問を2つします。
Q:大切な人が亡くなって数日、あるいは数週間で、多くの人のショック状態は落ち着きます。
A:答えは〇です。
多くの人のショック状態は落ち着きます。
ショック状態は落ち着きますが、大切な人がいないことに直面し、言いようもない悲しみを経験するようになります。一人分の食事を用意し、一人でテレビを観ていると突然泣き出したくなります。眠れなくなったり、食欲がなくなったりします。何をやっても楽しめなくなります。
Q:先日、駅の雑踏で亡き夫の姿をみつけ、思わず大声で名前を叫んでいました。夫の声が聞こえることもあります。私はおかしいのでしょうか?
A:亡き方の姿が見える、亡き方の声が聞こえるというのは、珍しい反応ではありません。私のために亡くなった人がそこにいてくれると思うことで、つながりを感じ安心できる、と多くの方が語られています。
次は、大切な人を失った後の生活への適応に関する質問を5つします。
●喪失への適応
Q:時間の経過とともにグリーフから完全に回復できると思いますか?
A:答えは×です。
時間が全てを癒してくれるという言葉がありますが、時間が経過することで、グリーフから完全に回復することは不可能です。グリーフに終わりはなく、けして元の状態に戻ることはできません。
一般論で語ることはできませんが、数ヵ月から2~3年程すると、日常生活を送るのに必要なエネルギーが戻り、気持ちも落ち着き、通常の食事や睡眠の習慣は戻ってきます。楽しい出来事を経験できるようにもなります。そうした状態になるには、一般に考えられているよりも、長い期間を要することを覚えておいてください。
グリーフは日ごと少しずつよくなるものではありません。二歩進み、一歩戻るという表現が当てはまるでしょう。
グリーフの苦痛を何年も経験する方、何十年も経ってから経験される方もいます。
Q:喪失への適応には何をすればよいですか?
A:喪失に向き合うことは、自分自身と向き合うことです。大切な人を亡くしたことで生じた変化に向き合い、まず、ご自身にわいてくる思いを受け止めましょう。泣きたい時に、泣いてよいのです。自分を残して亡くなった人に対して「私を置いていくなんて」と怒りを感じたら、その思いをそのまま受け止めましょう。大切な人のことを理解できていなかった、と申し訳ない気持ちになることもあるでしょう。そうした過程で、心の中に、少しずつ大切な人の居場所を作っていくことになります。
日常生活を送りながら、親身になって聞いてくれる人に自分が感じていること、辛さ、悲しさをそのまま表現し、共感的に受け止めてもらうことは役に立ちます。何度も語ることで、亡くなった大切な人が、ご自分の人生の一部に取り込まれ、生き続けるようになり、新たな自分、新たな社会関係を築いていけるようになります。
Q:自分の話を人にするのが苦手です。人に聞いてもらわないと、喪失に適応できないのでしょうか?
A:「話をしたくない」という意思は尊重されます。話をしたくなった時に、話したい内容だけを話すのがよいでしょう。写真を整理したり、形見を大切にしたり、日記を書くという方法も喪失の適応には有効な方法です。
Q:自分が感じていることを、親身になって聞いてくれる人が身近にいません。どうしたらよいでしょうか?
A:グリーフを抱えた人たちのサポート・グリープに参加するのがよいでしょう。グループには、同じ経験をした当事者が集まります。同じように苦しんでいる人がこんなにいることを知ることで、孤立感から解放されます。グリーフを経験したばかりの方から、日常生活を送るエネルギーが戻り、気持ちも落ち着いている方も参加されます。自分の数年後の姿を見出すことで安心される方がいます。
ネットで「生と死を考える会」や「グリーフサポート」「グリーフケア」と入力すると、お近くのサポートグループの情報が得られます。
Q:長年連れ添った妻が亡くなり、悲しみを紛らわすためにアルコールばかり飲んでいます。こんな生活をしているなら、死んだ方がましだ、と思えます。
A:喪失には混乱が伴いますが、日常生活を送る能力が損なわれ、「死んだ方がましだ」と口にしているのであれば、地域の精神保健福祉センター等専門家に助けを求めることをお勧めします。
最後に、大切な人を失った人への援助方法に関する質問をします。
●グリーフを経験している人への援助
Q:グリーフを経験している人への援助方法を教えてください。
A:その人のことを気にかけ、具体的に援助を申し出ることが大切です。例えば「買い物に行くのですが、何か買ってくるものはありますか」「夕食を作ってお持ちしたいのですが、いつがよろしいですか」等日常的なことの援助を申し出るとよいでしょう。
電話をすること、手紙を出すこともその人のことを気にかけることになります。
「忙しくすることで気を紛らわしなさい」等の価値観を押し付けたり、「あなたのお気持ちはわかります」といった相手を理解しているかのような発言は控えましょう。何と言ってよいかわからない時は、「あなたのことを気にしていました。その後、いかがですか」と言ってみましょう。見ないふり、知らないふりをされると、当事者は亡くなった人の話ができなくなります。その人の悲しみに配慮し、そばにいて気持ちを受け止めることが大切です。
ご一緒にグリーフの基礎知識をクイズ形式にて学んできました。知識を得ることで、ご自分のことを理解し、語れるようになることは喪失の適応に役に立ちます。
(2019年9月25日)
© 生田かおる