●トラウマとは?

トラウマとは、個人が持っている対処法では、対処することができないような圧倒的な体験をすることによっておこる著しい心理的ストレスのことです。圧倒的な体験の例としては、災害、暴力、性被害、事故、虐待等が挙げられます。

 

トラウマとは単なる「ストレス」とは意味が違います。日本語に訳すと「心的外傷(心の傷)」です。強い恐怖を伴う経験をすれば誰でもがトラウマを抱えます。そうした時、信頼できる人に怖かった経験を語り、受け止めてもらえることで、小さな心の傷は治っていきます。誰にも語ることなく封印していると、怖かった記憶は冷凍された状態で保存されるのです。その出来事を思い出させるような音、匂い、状況等に出会うと、その時の怖さが「今、ここで」起こっているように思い起こされ、日常生活を脅かすものになります。加えて、トラウマの原因は自分の落ち度のせいなのだ、と自分を否定する気持ちが強くなります。

 

●EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)とは?

EMDRは、F.シャピロ博士により開発され、世界保健機構(WHO)がトラウマ治療の効果を認めている心理療法です。

 

EMDRは、過去の記憶の処理を短期間で行うことができ、過去の怖かった経験を過去のものにすることができます。

 

●EMDRの手続き 

トラウマとなった出来事を思い出しながら、眼球運動やタッピングなどで左右交互の刺激を当事者に与えるのがEMDRです。そうすると、当事者に新たな記憶が浮かび、自分に対する否定的な考えが肯定的な考えに改善していきます。さらに左右交互の刺激を加えていくことで、適応的な記憶の処理が進み、トラウマに伴う心と身体の症状が解消されます。怖かった経験を思い出しても「今、ここは安全で、怖かった過去の話をしているのだ」と思えるようになります。

 

日本EMDR学会「EMDR]とは